Memorandum of Haruki 'ハルキの備忘録‘

yahooさんから 引っ越してきました。どうぞよろしくお願いします。

⑪ポストの子、春さんに会いに行く。

今 午前9時だ。
今なら、この前 こはるさんと乗った特急電車に間に合う。
でも 休日の外出は届け出をしないといけない。
それに 小学生は、責任を持つ大人がいないと 外出は許されない。
どうしよう。

学習ボランティアの人や花壇のボランティアの人たちが ホームに入ってくる。
前に受験のことで相談した2人の女子高生がいる。
秋菜さんと夏実さん、合わせてあきなつみだ。
目が合う。
「冬馬君、おはよう、今日は 花壇の草取りに来たんだ。
 終わったら 遊ぼう。」

僕は 2人の手をひっぱり人がいない廊下の隅に行く。
僕は 今日どうしても春さんに会いに行きたいと2人に告げる。
2人は にやっと笑い
「冬馬君 脱出作戦 しましょうか。」
2人は 何か話していた。
学習ボランティアで来ている姉、秋絵さんも呼んでくる。
外出するときは 20歳以上の人が 付き合わないといけない。
秋絵さんは21歳だ。
2人は 僕が調べたいことがあって 街の大きな図書館に行きたいので 
許可してほしいと先生に頼みにいった。
2人と秋絵さんが一緒だということで 先生は 今回は特別だぞ、
これからは 前日までに 届け出を出せよと言って 認めてくれた。

僕は リュックに本を入れ、今まで貯めていた小遣いをダウンジャケットのポケットのファスナーの中や机の一番奥から出して財布に入れた。
低学年の時は 月に1000円、中学年は2000円、高学年は3000円もらえる。
お年玉も 毎年 5000円もらえる。
みんなは お菓子を買ったり 文房具を買ったり お金を貯めてゲームを買ったりしていたが 僕は お金を使うことがなかったので かなりたまっていた。
これなら 往復の電車代も大丈夫だ。

僕は 跳ねるようにホームを出た。
ホームの入り口で あきなつみと秋絵さんが待っていた。
僕は みんなにお礼をいって坂を下りようした。
すると
「一人で行く気じゃないよね。
 私達は冬馬君の一日保護者だからね。
 一緒だよ~。」
そういって あきなつみは、僕の頭をぐりぐりして笑っている。
僕たちは スキップしてるみたいに坂を下り 
秋絵さんは気を付けてね、と後からついてくる。

僕は 一人で行くことを決めていたが 本当は心細かったので
ほっとした。


電車の二人席をぐるっと回して 四人 向かい合って座る。

「なんか 冒険みたいだね。
ほんと わくわくするね。」
あきなつみは、よく笑う。
僕もなんか楽しいな。
エキュートで秋奈さんが買ったunoをして遊んだ。
ワーワーしているうちに、岬駅に着いた。

春さんの家に電話をかける。
呼び出しているが 春さんは出ない。
秋奈さんが スマホで岬公園墓地の電話番号を調べてくれた。
電話をかけると
「岬公園墓地管理事務所です。」
あっ 春さんの声だ。
「あのう~、、」

「えっ、冬馬くん?」

「はい、今 岬駅にいるんですが、、、」

「遊びに来てくれたんだ、
 ちょっとまってね。」

「秋さんが 駅に迎えに行くからね。
動かないで待っているんだよ。」

「はい。」

僕は電話を切った。
春さんは 僕が一人で来たと思っているみたいだ。

岬町のポスターやパンフレットを見ていたら 秋さんが 迎えに来た。
僕だけじゃなかったから びっくりしていた。
秋さんの運転で岬公園墓地に到着。
秋さんは 僕たちをおろすと
「買い物にいってきま~す。」とまた車を出していってしまう。
降りると海が見える。
すご~い、海がきらきらしてる~と あきなつみは はしゃいでる。


春さんが出てきた。
「冬馬くん よく来たね。
 かわいいガールフレンドがたくさんいるんだね。」
春さんに言われ、恥ずかしくなった。

管理事務所に行く。
くまさんは休みだったが ひーさんはいた。

「冬馬くん こんにちは。
お友達もこんにちは、
たくさん遊んでいってね。」
隣の休憩所のソファに座る。
「コーヒーいれますが、飲みますか?」

秋絵さんは 
「私 コーヒー大好きなんです。
お願いします。」

ひーさんは 秋絵さんに ブルーマウンテンというコーヒーをマグカップに入れて
テーブルの上に置く。
僕は コーヒーは飲まないけど すごくいいにおいだ。

あきなつみと僕は 春さんが持ってきてくれたジュースを飲んだ。
海を見ながら飲むジュースは おいしいな。

「海岸に下りてもいいですか?」

「いいよ、 先客いるけど 気にしないで 遊んでおいで。」

秋絵さんは まだコーヒーを飲んでいたので あきなつみと僕は 坂を走って海岸に行く。

小学一,二年生くらいの男の子と僕より少し小さい男の子がお母さんと ブロックで作られたバーベキューのコンロの下に薪を入れ火をつけていた。
でも なかなかつかないみたいだ。

僕たちは 波打ち際で濡れるか 濡れないか ぎりぎりのところを行ったり来たりして遊んだ。
秋絵さんも来て 今度は石を投げて遊んだ。

その様子を二人の小学生が 笑いながら見ている。
あきなつみは 二人を呼んで 一緒に遊んだ。
弟は よく話すが 兄のほうは 恥ずかしいのかなにもしゃべらない。
僕は 小さい子がたくさんいるホームで一緒に生活しているが
こんな風に遊んだことはない。


秋絵さんは お母さんの所にいって 火をつける手伝いをしていた。

秋さんがなにやらたくさん食材を乗せた銀の皿をぎこちなく持ってくる。
腕にはスーパーの袋が二つ提げている。

「冬馬くんもお姉さんたちも おいで。」
と秋さんが僕たちを呼ぶ。

「昼食 まだでしょ?
 よかったら 一緒に食べません?」

「えっ、ほんと!
 おなかすいてたんですよ。
うれし~」

あきなつみは ぴょんぴょん跳ねている。

「家族でお楽しみのところお邪魔してすみません。」

秋絵さんがそう言いながら頭を下げると

お母さんは
「たくさんで食べたほうが 楽しいですよ。」
と笑っている。

ブロックのコンロの上に網をのせて 肉を焼く。
骨付きの味付き肉だ。
熱いけど すごくおいしい。
ウインナーも 野菜も 
鉄板で焼いた焼きそばも
みんなおいしい。

ホームのバザーで焼く鉄板の焼きそばよりおいしい。

ひーさんや春さんも交代で食べに来たが 仕事中なので すぐ戻っていく。

あきなつみも秋絵さんもたくさん食べていた。
お母さんは 自分で食べるより 焼いてあげる方が多いが すごくうれしそうだ。

子どもは お母さんに
「春恵先生、 おいしね。楽しいね。」
と言いながら焼きそばをほおばっている。
お母さん、
「そうだね。みんなで食べるとおいしいね。」
と笑う。


春恵先生? えっ?おかあさんじゃないの?


バーベキューの片づけをし終えたら 二時になった。
もっと遊んでいたかったけど 門限の五時までに帰らないと 
僕も秋絵さんたちも叱られてしまうから仕方ない。
墓地の中を歩いて駐車場まで行く。
カーネーションの花が供えてある墓が多い。
死んでもお母さんは お母さんなのかな。

僕たちは ひーさんにお礼を言って 秋さんに駅まで送ってもらう。
春さんは こはるさんに用事があるからと言って 僕たちと一緒に帰ることになった。
秋さんは
「今度は海に入って遊ぼうな。水着お忘れなく!
それじゃあ 気を付けてね。」
そういって さよならした。


あきなつみは 
「はしゃぎすぎけど、楽しかった~ ちょっと寝るわ~」
といって座席につくと 二人とも寝てしまった。

秋絵さんも
「私も寝るから 冬馬くん、着いたらおこしてね。」
といって寝てしまった。

僕は 二人席に春さんと座った。
「冬馬くん 今日来てくれてありがとね。
 ちょっとびっくりしたけど すごく うれしかったよ。」

「あのね。ホームには 嘘ついて来たの。
 でもね。秋絵さんたちが 協力してくれてんだ。」

「いい 友達だね。」

「う~ん、秋絵さんとは 今日初めて話したし、秋奈さんも夏実さんとも二回くらいしか話したことないんだ。だから、友達じゃないと思う。」

「でも 先生にウソまでついて、冬馬くんの旅にもついてきてくれたでしょ。
友達だと思うな。」

「そうかな? そうだったらうれしいな。
僕友達ほとんどいないんだ。
ほしいとも思わなかったんだ。」

その後も 春さんとたくさん話をした。

僕は いつも必要のこと以外、ほとんど人としゃべらないが
春さんといるとおしゃべりになる。

春さんには 何をいっても大丈夫だ。




駅に着いた。

春さんは 他の線に乗り換えのため ここでさよならだ。

僕が 改札を出るまでずっと笑って手を振っていた。

僕は 涙がでそうだったから 改札をでたら 振り向いて春さんを見ないようにした。



僕たちは 坂を上り ホームの中に入る。

夕食が始まっていた。

秋絵さんは 先生に挨拶をすると 3人で帰っていく。

僕が お礼をいうと

あきなつみが 
「言い夢見ろよ!」
とふざけて僕に変な顔をした。

それから ご飯を食べ 風呂に入って ベッドに入った。

今日は 勉強をしなかった。
こはるさんにしかられそうだな~

今日の分は 明日まとめてしよう。

今 僕は最強で なんでもできる
今 僕はなんでも許す
友達のお母さんが いなくなってしまえなんて思わない。
みんなが幸せになればいい
今の僕は 心からそう思う。

月もそうだと光っていた。