⑦『ポストの子、ホームステイ2日目、流水算、』
ある川のA地点とB地点を往復する船があります。
川の流れの速さは 毎時3.5kmです。
上りには5時間、下りには3時間かかりました。
A地点とB地点は 何メートル離れていますか?
う~ん 難しい
線分図書いたけど ぜんぜんわかんない、
10分経過。
こはるさんが 部屋に入ってきた。
僕の書いた線分図を見て
「なかなかいい感じだね。
でもね この問題は 速さに注目して線分図を作るといいかな?」
僕の線分図は 時間をもとにして書いた。
「でも ここでは川の流れの速さしかわからないですよね。」
「そうだね、
手掛かりになるのは 船の上りの速さと下りの速さだよ。
速さそのものは わからなくても 上りの速さと下りの速さの関係は
わかるんじゃないかな?」
「関係?」
「そう 比で考えてみよう」
「時間の比は 5:3で 速さは 速いほどかかる時間は短いから、、、
どうなるんだろう。」
「冬馬君 いい所に気がついたね。
速さは 速いほど時間が短いんだよね。
速さは、距離÷時間で求められるよ。」
僕は 速さ=距離÷時間の式に 数字を入れてみた。
距離は上りも下りも同じだから △としよう。
船の上りの速さ=△÷5時間
船の下りの速さ=△÷3時間
船の上りの速さ:船の下りの速さ= 5分の△:3分の△
全体に15をかけると
= 3×△:5×△
△でわると
=3:5
でた!! 船の上りの速さ:船の下りの速さ=3:5だ。
こはるさんは 僕のノートを見て
「冬馬君、すごいよ! 一人で比が出せたね。
それじゃ 次のヒント。
船が上りでも下りでもない川を進む時の速さを 静水の船の速さというんだよ。
この言葉はよくでてくるから 覚えてね。
船の上りの速さ=静水の速さ-川の流れる速さ
船の下りの速さ=静水の速さ+川の流れる速さで求められるよ。
この式を使って川の流れの速さを求めてみよう。
これも比で求めてみようね。」
こはるさんは 赤のペンで僕のノートに
船の上りの速さ=静水の速さ-川の流れる速さ
船の下りの速さ=静水の速さ+川の流れる速さ
と書いた。
この式の意味はわかるようで なんかわからないけど
とにかくこれを使って解いてみよう。
この式で同じなのは 静水の速さだから
静水の速さ=船の上りの速さ+川の流れの速さだ。
この式を
船の下りの速さ=静水の速さ+川の流れの速さの式と一緒にすると
船の下りの速さ=(船の上りの速さ+川の流れの速さ)+川の流れる速さ
の式になる。
これにさっき求めた比と川の流れの速さを□として入れてみると
⑤=(③+□)+□
□=①
川の流れの比は1だ。
この比を求めるのに20分もかかった。
僕が この比を出すまで こはるさんは 後ろのベッドに座り 本を読んでいた。
僕が でました。
と言うとこはるさんは僕のノートを見る。
「すごいよ。正解!
一人でよく出来たね。
船の上りの速さ:船の下りの速さ:川の流れの速さ=3:5:1
とわかったから 後は簡単だよ。
問題をよく読んで解いて ごらん。」
問題を読む。
川の流れは 毎時3.5kmでこれが 比で1、
船の上りの速さは 比で3だから 3.5×3=10.5
速さは毎時10.5mだ。
A地点とB地点の距離は 船の上りの速さ×上りにかかった時間で求められる。
10.5×5=52.5
答えは 52,5kmだ。
「こはるさん 52.5kmで合ってる?」
こはるさんは 自分のノートに計算した答えをみて
「大正解!!
がんばったね。
冬馬君 本当にセンスあるね。」
1問解くのに 1時間近くかかったが すごく充実した気持ちになり
また 他の問題も解きたくてうずうずした。
そんな僕の様子を見て こはるさんは
「それじゃあ その答えの確かめをしてみようか。
さっきは船の上りの速さを出して距離を求めたよね。
今度は 船の下りの速さを出して 距離を求めてみようか。」
僕はノートにどんどん書いていく。
こはるさんは その様子を横でずっと見ている。
船の下りの速さは 比で5だから 3.5×5=17.5
速さ 毎時17.5m。
17.5×3=52.5
答え52.5m
さっきと同じ答えだ。
「すごい 大正解だね!
特殊算の計算は すごく難しくてなぜそうなるのかが わからない式も多いと思う。
たとえば
船の上りの速さ=静水の速さ-川の流れる速さ
船の下りの速さ=静水の速さ+川の流れる速さ
この式がなぜそうなるのか はっきりわからなくてもいいから
とにかくこの式を覚えてね。
問題をたくさん解いていくうちに
ああそういうことなのかということ気づいてくるから。
受験では こだわりすぎないことも大事だからね。
少し 休憩しよう。」
僕は トイレに行き 部屋にもどり ベッドにどでんと寝た。
そしてにやにやしながら天井をみた。
リビングから こはるさんの
「ジュース飲む?」
という声がする。
「はい いただきます。」
僕は大きな声で返事をし リビングに行く。
冷たいジュースが 昨日より すごくおいしかった。
テーブルの花もベイマックスも笑っていた。