2018年本屋大賞 『鏡の孤城』 辻村 深月
学校での居場所をなくし、閉じこもっていた"こころ"の目の前で、ある日突然部屋の鏡が光り始めた。 輝く鏡をくぐり抜けた先にあったのは、城のような不思議な建物。 そこにはちょうど"こころ"と似た境遇の7人が集められていた。
前から読みたかった作品だが、文庫化するまで待とうと思っていた。
しかし 本屋大賞をとったので どうしても内容が知りたくなり読んでみた。
登校拒否の中学生たちが主な登場人物で よくある話だ。
幸いにもいじめにあったことも いじめをしたこともなく またいじめを見たこともなく 学生生活を部活に捧げ 後はぼーと過ごしてきたため 今一つ 作品の中の子供たちに感情移入して読むことが難しかった。
現代は 特に人と関わることに繊細でないといけない部分が多そうだ。
作品の中の子供たちは 絶えず人目を気にし そんなことどうでもいいと思うことにも敏感だ。大人の自分がどうでもいいと思うことがそうではないのが思春期なのかもしれない。
話の展開はよくある話で 謎の部分も予測できた。9割程度読み なぜこの作品が大賞をとったのか、いささか疑問を抱き読み進めた。
しかし 終盤に あああ そういうことなのか そういうことを伝えたかったのかとわかり それで大賞受賞も納得した。
辻村 深月さんの作品は 何冊か読んでいて この『鏡の孤城』と似た作品もあるが この作品は それらのものより円熟味を感じる。辻村 深月さんは、毒親と子供の悲痛をえがくのがうまい。しかし 今回の作品は さまざまな視点から物事をとらえている。
今の中高生やその親が読んだら 共感できる部分が多いと思う。
特に自分の世界だけにいる人たちが勇気をもらえる作品だと思う。